温暖化などの地球環境の変化に備え、貴重な遺伝子資源である農作物の種子を北極近くの島に設けた保管庫に半永久的に保存する現代版「ノアの箱船」。昨年施設が完成したばかりのこの国際的な事業の成功を願うモニュメントの作成が、一人の日本人彫刻家に委ねられた。人類の生存という、世界共通の願いを込めた作品は既に完成。設置場所となるイタリア・ローマの国連食糧農業機関(FAO)本部への輸送を控え、船積みを待つばかりだ。
モニュメントを手掛けたのは、横浜市港北区下田町の田辺光彰さん(68)。
施設運営にかかわる独立国際機関「グローバル作物多様性トラスト」のケイリー・ファウラー代表が、東南アジアなどに残る野生稲の自生地保存運動にも携わり、環境をテーマした作品で知られる田辺さんの活動に共感。白羽の矢を立てた。
野生の稲をモチーフにした作品は「一粒の野生稲のたね・MOMI─2008」(ステンレス鋳造、長さ約九メートル、重さ約二百五十キロ)。新潟県直江津市内の鉄工所を借り切り、昨年秋から制作を続けてきた。
三〇〇〇度の高熱で金属の表面を溶かしながら、同時に空気を高速で噴射し、ステンレスの表面にクレーター状の無数の傷を刻みつける独特の手法で、一粒の野生稲に宿る生命力の大きさを表現している。
作品は今月十八日にもローマに向けて海を渡る予定で、二月中旬には現地に到着。FAO本部ビル内に設置される。
田辺さんは「新たに設けられる種子保管庫は人類にとって希望の種の保管庫でもある。その仕事にかかわることができ感慨深い」と話している。
◆グローバル種子ボルト(保管庫) 北極近くのスピッツベルゲン島(ノルウェー領)の岩山にトンネルを掘って「天然の冷蔵庫」とし、世界各国に現存する農作物の種子など冷凍保存する世界最大の種子バンク。ノルウェー政府が約10億円を投じて建設し、FAOや世界銀行などが出資するグローバル作物多様性トラストが施設を運営している。
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