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解体撤去の届け出があった老舗の天野屋旅館カナロコ

 国登録有形文化財の「天野屋旅館」(湯河原町宮上)を保存活用する意向だった同旅館の前運営会社が文化庁に解体撤去を届け出ていたことが、十五日までに分かった。同社は資金難を理由に、リゾート開発を進める別会社に同旅館を転売していた。明治初期創業の老舗旅館の文化財登録は抹消、取り壊しという結末を迎えることとなる。

 同旅館は二〇〇五年四月に閉館。その後、当時の所有者から運営会社「クリスタルゲート」(本社・東京)が購入。本棟や別棟など五件の建物を国登録有形文化財として申請したが、登録決定直後の昨年六月下旬に会員制リゾートホテルなどを運営する「リゾートトラスト」(本社・名古屋)に転売していた。

 湯河原町は同年十二月、ク社から同館の解体撤去の届け出を受け、県を経由して文化庁はこれを受理した。

 県内では、解体撤去で国登録有形文化財が抹消されたケースは、リ社が購入して解体した箱根町宮ノ下の老舗「奈良屋旅館」だけ。同旅館跡地では一〇年春完成を目指して会員制リゾートホテルの建設を進めている。

 全国に約二十カ所のリゾートホテルを開発しているリ社は、県内二カ所目となる天野屋旅館の土地の開発計画を明らかにしていないが、同社広報担当者は「天野屋旅館は場所が魅力的。一年に一カ所のペースで開発を進めているので早急ではない」と話している。

 十四日に開会した湯河原町議会三月定例会の提出議案によると、リ社はすでに買収した天野屋旅館本棟などに加えて、周辺の町有地なども広範に購入する意向を示している。

 天野屋旅館は、各地の銘木を多用した「銘木旅館」と称され、箱根の大工が手掛けたデザイン的にも凝った秀作として知られる。建築的、歴史的にも価値ある旅館の取り壊しを受けて、町は「記録として図面を残すか、現部材を(別の建物で)できる限り使ってもらうぐらいしかない」とあきらめた様子。文化庁担当者は「保存再生を願ったが非常に残念」と話している。

◆国登録有形文化財の抹消 文化庁によると、これまでに全国で国登録有形文化財の抹消は、より手厚く保護される重要文化財指定への”格上げ”が101件、火災や洪水などでの消失44件、何らかの理由による解体撤去39件。現在、国登録有形文化財として維持されているのは6616件(県内136件)。

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